
私は1974年、名古屋に生まれました。横浜国立大学建築学科を卒業後、就職をせずにさまざまな仕事をしながら生活を支えていました。その時期、決定的な文学作品に出会います。なかでも、ロマン・ロランの『ジャン・クリストフ』とトルストイの『戦争と平和』は、芸術に生きる道を志す強い動機となりました。その後、インドやタイをひとりで巡るスケッチ旅行に出かけ、世界の広大さに触れた経験が、私の芸術的なまなざしを大きく広げることになりました。
私の制作は、抽象彫刻と絵画を通じて「魂の自然な言葉」を形にする試みであり、人間存在をめぐる根源的な問いへの探究です。木材、金属、麻布、油彩、水彩といった素材を扱い、それぞれの下地を丁寧に準備することで、素材がもつ内在的な生命力を引き出そうとしています。彫刻では空間的な奥行きと物質の存在感を重視し、絵画では筆致や色彩の構造を通して、作品そのものから立ち上がる呼びかけに直感的に応答しています。制作は、自己と素材との対話として進んでいきます。
2006年、東京・銀座で開催された「若き画家たちからのメッセージ」展において、すどう美術館賞を受賞しました。その後も同ギャラリーを中心に、個展やグループ展を多数行ってきました。国外では、マドリッド研修プログラム(2005)、アーティスト・イン・レジデンス ARIO 2011(小田原)、mmm ART EMBASSY 2016(スロヴェニア・ブルダ)、INCIDENT IV – ACCIDENT国際芸術祭(2018、ポーランド・チェンストホーヴァ)、Art Circle International(2024、オーストリア・ヴォルフガング湖)などに参加しています。また、ドイツ・カールスルーエ(art KARLSRUHE、2008–2010)、アメリカ・サンタフェ(ART Santa Fe、2011–2012)といったアートフェアにも出展しました。
さらに、個人の創作にとどまらず、社会的な交流にも取り組んでいます。主催する湘南アートベースを通じて、日・スロヴェニア国交25周年を記念した「Beyond Borders」展(2017、リュブリャナ市庁舎)、箱根でのアーティスト・イン・レジデンス(2018)、日・ポーランド国交100周年を記念した「Visible Mythology」展(2019、小田原・清閑亭)など、国際的な文化交流の企画を行ってきました。
私の長期的な展望は、制作を通じて人間存在の根本的な問いを明らかにしていくことです。すなわち、「人間とは何か」「人間はいかなる存在になりうるのか」「人間から何が生み出されるのか」「そして人間はいかなることをなしうるのか」という問いです。国境を越え、歴史を広い視野からとらえ直し、人間存在への問いをさらに深め、作品を通じて新しい人間のあり方を提示していきたいと考えています。現在は神奈川県大磯町を拠点に活動しています。